さよなら妖精 (創元推理文庫)
米澤さんは今正に気鋭の作家さんです。このミス2010では作家別投票で1位の栄冠に輝きました。
時は1991年、日本。何気ない日常に現れた妖精は、異国の地からやってきた女の子でした。
このお話は、構造としては回想という形態を取ったミステリーなのですが、そのお話の進め方が
実に上手いです。仕掛け方が米澤さんの習作とは一風違っていて、初期の作品群からの跳躍とも
言うべき位置付けの作品です。
1年後、女の子の去った日本で主人公が推理を繰り広げるのは、『彼女の故郷はどこなのか』と
いう命題です。主人公の日記を通した回想を中心とする本作は、青春小説としての青さを押さえ
ながら、思春期特有の無能感、内省的な想いがぐっと伝わってくる情緒的なお話です。一人称と
いうのもいい。ところどころに時事的な前提はありますが、国際情勢や歴史に疎くても堅苦しく
思う必要はないと思います。青春小説としてキャラ読みも可です。
彼女は主人公に、読者である私に何を残してくれたのでしょうか。
ふたりの距離の概算 (角川文庫)
10年06月の単行本の文庫化.2012年にはアニメ化もされた『古典部シリーズ』の5作目になります.
舞台は校内マラソン大会.ゴールまでの間にとある問題を考え,解決を…という流れになっています.
ただ,物語はマラソンのスタート後,すぐ回想へと入り,その後もそれが大半を占める展開で,
さらには前後する時間や,この時点では存在意義のわからない小さな謎やいくつものやり取りに,
それぞれに惹かれる部分はあるものの,軸というか焦点が掴みづらく,やや悶々としてしまいます.
しかし,中盤から終盤,いわゆる解決編で,先のあれこれをはじめ,いくつもの断片を拾い上げ,
答えを導き,開陳をしていく様子は,無理めな解釈もあるものの,気持ちのよい収束感があります.
とはいえ,今回は謎というより,タイトルにもある『ふたりの距離』に重きが置かれたようで,
主人公とヒロインはもちろん,いくつもの『ふたり』の,恋愛,友人などの距離が見て取れます.
中でも,主人公が推理や情報だけではなく,人を信じるという行動原理に基づき動いていく様子は,
読み手はもちろん,彼自身も驚く変化であり,自分自身でも気づく『意識』の芽生えが強く印象的で,
広がり続ける世界への希望と不安,変わりだした自分への思い,今後の成長と距離が楽しみになります.
なお,カバーについては,期間限定で京都アニメーション描き下ろしのリバーシブルカバー仕様.
本作のマラソン大会での一コマが描かれており,既刊をアニメ版で揃えられた方はお早めにどうぞ.
氷菓 限定版 第1巻 [Blu-ray]
京アニがアニメ化するというので、原作第一作「氷菓」を読んだら大変気に入り、他の原作も全て読んだ後でアニメを見たファンです。
原作は非常に地味な作品で、地方高校生の日常を舞台にアニメのうたい文句「青春は痛いだけではない」「群像劇」がピッタリなお話です。自分と社会(周囲)の軋轢に悩みながらも、古典部のメンバーが経験する青春グラフィティといったところでしょうか。さすがに京アニスタッフの作品への理解力に感心します。
なので地味だからつまらないとか、大きな事件が起きないとか、推理の部分がどうとかで不満を訴える方には「そうゆう作品ではないんですよ」というしかありません。
本来なら実写ドラマで練った脚本でやればいいドラマになるんじゃないかと思いますが、あえてアニメでやったところに、京アニの人間の心の機微まで表現しようというチャレンジ精神を感じます。
昨今、深夜に垂れ流されてる「萌えBoy meets girl」アニメ群とは全然別次元の志の高いアニメ作品です。
☆−1は第一話の「気になります」の髪の毛触手表現が、ちょっとやり過ぎな感があったので、わずかな不満として引きました。
氷菓 (角川文庫)
最近よく見かけるので、よんでみました♪
正直アニメ絵にひかれたことは否めない!
うーん、これは・・・日常系ミステリー?たいした事件が起こるわけでなく。
学生生活の中で起こった、ちょっとした「謎」(普通だったら気にも留めないような)を解いていく、ある意味地味な作品。
ヒロイン・千反田さんの叔父さんの話は悲痛ですが、言葉遊びに面白みを感じました。
割とロジカル。
面白いけど、正直一読して満足かな。
学生時代に読んでいたら、もっと感情移入できてわくわく出来たかもしれないなー。
奉太郎の省エネな自己評価も微妙だけど、別に古典部である意味もないような。
シリーズ物みたいだから、続きを読めばもっと楽しいかもしれない。