青い蝶
ピアノのメロディーラインが坂本龍一を彷彿とさせ、まるで教授の作品を聴いているかのような錯覚を覚えます。そして実際、教授もフィーチャリングという形で参加されており、「チンサグの花」も収録されているのでアルバム「Beauty」の頃の雰囲気を感じました。
全体的にアンニュイな雰囲気を醸しだし、音楽がある世界観を伴って響きます。まるで短編映画のようだというレビューにも頷ける作品に仕上がっていると思います。
葬送 平野啓一郎が選ぶ”ショパンの真骨頂”
絶対に買いですね。
聞いていて、ふと、平野啓一郎さんが小説「葬送」を書かれていたころの風貌を思い出しました。
「葬送」は年々、重みを増してるような気がします。
芸術も消費されるためだけに作るられることも多い世の中で、作家がある決意を持って、自分の作品と真剣に向かい合い
そしてそれが、色あせないのは奇跡的なような気がします。
ただ、純粋にこの音楽に向かい合ってみたいと思わせる輝きが、このCDにはつまっています。
決壊〈上〉 (新潮文庫)
猟奇殺人、同時多発テロ、少年犯罪、ネット犯罪など盛りだくさん。
主人公の沢野崇は弟・良介の殺人の犯人として警察やマスコミから疑われる。
死の直前、弟は自身のブログに兄への不信感をあらわにしていたが、そこに「666」なる人物からの書き込みがあった……。
平野啓一郎さんはきっと「つねに現代社会のまっただなかで小説を書いていく」決意をされているのでしょうね。
その振り幅の対極として『日食』『一月物語』『葬送』といった古い時代の旧い形式を採用する試みがあるのだと思います。
この作品をみると平野さんが「小説で何をやりたいのか」や「どんな作品が好みなのか」がわかる気がする。
こういうチャレンジングな試みをどんどんみせてほしいです。
日蝕 (新潮文庫)
昔、色々話題性豊富な作品だったようですが、私は「中世の神聖と異端について書かれた本」という点で読んでみました。
何か得るものはあったかと思うと、ちょっと思いつきません。悪いですけど。
でも、頭は良さげな方なので、芥川賞作家という汚名?をすすぐほどの名作を書かれること期待します。(堀田善衞レベルまで行ってくれればうれしいな)
私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)
現代新書も随分とやわらかくなったものだ。
少し前までだったら、こういう本は「青春出版社」の独壇場だった。
また、三田誠広氏の芥川賞受賞作「僕って何」を連想した方もいるかもしれない。
その現代版とも言えそうだ。
こんな青春真っ只中みたいな内容の本が、学術を扱う現代新書から出るというのも、
低迷している出版界を活性化しようという編集者の苦肉の策だろうか。
著者の言わんとすることは、要するに「いろいろな経験の積み重ねで、だんだん器用になった私」
ということで、別に新しくもないし著者の小説にも興味の無い者にとっては、退屈なだけ。
結構物知りだが、まだ捉え方が浅いと感じる。
「個人」から「分人」へ
タイトルに惹かれて購入してみたが、期待はずれだった。
何も新鮮さを感じなかったし、面白くも無かったのだ。
でも、若い人たちがこういう本に向かうことは、良いことだと思う。
くだらないフォークソングで、ごまかされてきた世代からみると、
うらやましかったりする。
初々しくて、青春を楽しんでいる感じがあって、若い人が幸福な時代になったと実感する。