イブの三つの顔 [DVD]
名作「テキサスの五人の仲間」で、すごく魅力的なヒロインを演じたジョアン・ウッドワード(P・ニューマン夫人)が、多重人格障害のイヴ役でアカデミー主演女優賞を受賞したが、日本劇場未公開作品。
今鑑賞してみると、この時代特有の演出の香りがする。
また、差別的な台詞や表現が気になる点は仕方がないかもしれない。
大幅にカットされて、日本でもTV放送されたことがあったらしい。
カット放送された時の、日本語吹き替えあり(70分のみ収録)。
おそらく現在の精神学や治療法等は全く異なるだろうし、患者の方に対しての配慮を考えれば、問題になる部分が多いように感じた。
だが、その点を差し引いても、J・ウッドワードの確かな演技力は見ごたえがあった。
3人の全く性質の異なる女性を演じながら、同一人物に見えないところは一見の価値がありそう。女優一人の演技で、映画1本を引っ張る力が凄い。
従順で夫に逆らえず内気な主婦イヴ・ホワイト(J・ウッドワード)がヒロイン。
時折訪れる頭痛と記憶喪失がイヴの悩みであり不安の種。
突然豹変したイヴに驚き、夫がイヴを連れて専門医(リー・J・コッブ「波止場」「十二人の怒れる男」など)のもとを訪れてから、驚愕の事実がだんだん明らかになっていく。
鑑賞しながら、50年代の夫のステレオ・タイプなのか、イヴの夫が特別にこういう性格なのか、妻を「殴る・ムチで打つ」という脅しの台詞に驚いたと共に、すごく嫌な気分になった。
また、イヴが多重人格になった原因の描写や掘り下げが薄いが、後にイヴ本人が著した書とはあらゆる点で異なっているらしい。
エンディングの締め方も、この時代ならではの終わり方のように感じる。
映画の冒頭「事実に基づくものです」と説明されるシーンがあり、当時は今とは異なり症例自体が一般に広く周知されていないという証のような気がした。
この映画のモデルとなった女性は、実際にはさらに長い間、数多くの人格が現れたとのこと。
同じ題材をもとに作られた三田佳子主演のドラマは、私にとってはすごいトラウマになった思い出の作品。
モノクロ映画で、特典映像なし。DVDパッケージは黒い背景のもの。
★3・5くらい。