日本は破産しない!~騙されるな!「国債暴落で国家破産!」はトンデモ話だ!
<概要>
・現在の日本経済の問題点の指摘と主に日本の財政破綻を主張する論者への反論書
・本書で主張する現在の日本経済の問題点 → デフレ
・本書で主張する解決案 → 一般的な金融政策によるリフレ
<本書の特徴>
1.財政破綻説への細かい反論
本書においてわが意を得たり、と思ったのは、本書で繰り返し繰り返し、財政破綻が
論理的飛躍に満ち溢れていることを述べているからです。例えば以下のような内容です。
>巷にあふれる国家破産本には、
>「ある日、外国人投資家が国債を投売りして」
>「ある日、国債の買い手がいなくなって」
>などの話が書かれているのですが、肝心の「ある日」に至る流れについては「みんな
が不安になって」、「マーケットが疑心暗鬼になって」というよく分からない解説しか
ありません。
引用部2行目を実際に主張している人を知っていますが、外国人投資家は日本国債を
円建てで5%程度保有している過ぎず、投売りが発生したとしても、影響も少なく、
また現在の各種経済指標からして、対応策はいくらでもあるように思えます。
順序立てて考えていくと発生する、本当にごくごく基本的な疑問に、噛み合った主張を
しています。
2.問題分析へのプロセスは非常に「具体的」で「細かい」
アルゼンチンの破綻経緯や国債の破綻ケースをモデルを作って、細かく数字ベースで、
この数値が減るとこうなる、というように説明が具体的で非常に細かいです。
レビューの都合上、さらっと流してしまいましたが、本書の非常に貴重なところだと
思います。
・途中の思考が省かれていない
・分かりやすい
・主張の反論点も考えやすい
というメリットがあるからです。
3.バランスシート以外の統計データはやや少ないか。
本書の肝である、日本のBSを除くと、GDP、税収、インフレ率などのグラフがあるぐらいで、
データは少ない印象です。おそらく数値だらけを敬遠されるのを恐れたのでしょうが、
データの引用目的の価値は薄いでしょう。
逆にバランスシートの部分は充実しており、国のバランスシートを考えたことがない人は
その解説も含めて、得るものが多いのではないでしょうか?
4.リフレ政策は具体性に欠け、また、飛躍があるように見えます。
本書ではお金を刷り、それを銀行を経由して市場に流す、という一般的な金融政策を意図
しているようです。しかし、これも素朴な疑問が生じます。
今は、「需要(小):供給(大)」のデフレで、お金の量が原因のデフレではありません。
一般的な金融政策は、需要が少ないことが原因のデフレに対し、なぜかお金を刷って
インフレで対処、と原因と対策が噛み合っていないように見えるのです。
具体的には、
・銀行には運用先の無い預金が数十兆規模で存在する。お金を発行することで市場に
お金が流れるのであれば、運用先の無い預金は、今、存在していないのではないか?
・実際にバブル崩壊後にマネタリーベースを10年かけて1.5倍にしたが、物価は2%下がり、
インフレ圧力として機能したようには見えない。
という事実です。
<まとめ>
この本は破綻理論に対して「プロセスを踏んでいない!」との指摘が斬新に感じる
ところですが、皮肉にも本書が主張するリフレ政策はプロセスの説明が甘く感じました。
取引先や従業員に迷惑をかけない小さな会社のたたみ方
知って置かなければいけない小さな会社の社長の心構えが満載である。
今経営が順調でも,いずれなるかもしれない悲劇の用意。
ネガティヴシンキングをネガティヴに考えれば、マイナスをふたつ掛け算したことになって、
プラスに転じるかもしれない。
実用書であるが、項目を追って会社をたたむまでの道のりを時系列で頭に思い浮かべると、
あの知人この友人、あそこの取引先、女房こともの顔、同業者、嫌いな奴、
いろんな人の顔が浮かんできて、まるでドラマを見るようである。