上野駅13番線ホーム (カッパ・ノベルス)
お馴染みの十津川警部と亀井刑事が活躍する鉄道ミステリー。今回はJR東日本のプレミアム列車カシオペアに関わる展開になっている。
16時過ぎ、上野駅13番線ホームに入線してくるカシオペアの姿は本当に美しいのに、本書の内容は期待に反して軽い。ドラマ化を意識しているのか脚本を読まされているような感じだ。途中で結末が見えてしまうベタな展開も2時間ドラマ風だ。
上野駅13番線ホーム (光文社文庫)
冒頭に出てくる事件はその後どうなっていくのかと興味をもったが、物語が進むにつれて惰性的な感じを受け、全体的に力のない作品になっている。
もっと著者の老獪なドラマ作りを期待していたが・・・。
トイレ内で殺されるシーンや13番線ホームで女性が背中越しに刺されるシーンを頭に浮かべると、不可能というかあり得ない出来事のように感じる。この辺りにも作品に力のなさを感じる。
その後の人間関係の背景にもあまりミステリアス性を感じない。
良かった点は、トイレ内で殺人を犯してしまった本田剛の心の動きが捉えられているところだろう。
物語にもう少し山があれば作品に力強さが出ていたかもしれない。