チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
こんな解釈、消化方法もあったのかと目から鱗の衝撃を受けました。初めて耳にした時に夢中になり、何度も聞く度に新たな発見があり、再び感動する演奏です。これまでに何度も聞き馴染んできた曲ですが音楽には演奏者によってこんなにも千変万化するものであると改めて認識をしました。ヤンセンとオーケストラが会話をするかの様な感触、或いはオーケストラがヤンセンをやさしく、尊敬をもってサポートする様な感触が全体を通して伝わってきて音楽を聴く喜びを感じます。ヤンセンもまたオーケストラを信頼し、尊敬していると思わせる感覚が強く感じられ、そのことが聞く者を幸福な気持ちにさせてくれるのかと思います。ヤンセンとオーケストラが演奏する楽しみに満ちて、そして音楽に対する愛情が溢れている演奏というのが一番の印象です。
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
数多にあるメンコンのなかでも、例えばハイフェッツだったり、五嶋みどりだったりなど名盤揃いである。
ヤンセンの演奏も悪くない。素晴らしいと思う。優美さが実に生かされ、細部に行き届いているといえよう。
ブルッフのヴィオラのためのロマンスは珍しい曲だが、ヤンセンのヴィオラでの演奏も、実にうまい。
最高の、とはいえないが、リラックスして聴きたいなら、このアルバムをお勧めいたしたい。
バッハ:インヴェンションとパルティータ
この世で一番多くトランスクリプションされている作曲家は、バッハ・・・と断言してもいいでしょうね? 極めて個性的で完成度が高いにもかかわらず、様々な編曲者の編曲を受け容れて新しい魅力をあらわにするバッハの曲はなんて不思議なのだろう、とかねがね思っていましたが、また新たな魅力をもったトランスクリプションが出てきました。インヴェンションは、他のバッハのキーボードの曲に比べれば、それほど好きではなかったのですが、このトランスクリプションを聴いてこんなにいい曲だったのかと驚いています。バイオリンとビオラとチェロの音が実に美しく絡み合って、何度聴いても飽きません。先日も平均律のオルガン版(奏者LOUIS THIRY)を聴いて、耳からうろこが落ちたとも言うべきポリフォニーの魅力に陶酔したばかりなのに、またか、と驚く他ありません。バッハは汲めども尽きぬ泉で、時空を超えて我々の心を潤してくれていると思います。それと、ジャンセンの音は清潔感に溢れた美しい音ですね。有名なパルティータなど、これまで聴いてきた演奏は、名演ではあってもみなどこか苦しげなところ、無理をしているなと感じさせるところがあり(難曲なので当然かもしれませんが)、聴いていて苦しくなってくるのが常だったのですが、ジャンセンの演奏は実に自然で、楽々と呼吸をしているような感じがしてとても心地よいですね。どんどんバッハの録音をして欲しいと思います。