花のあと [DVD]
他の方のレビューを見ていると北川景子の現代的な顔立ちや演技力に
酷評している人が多かったが、個人的にはそう思わなかった。
凛とした表情に男勝りの女剣士を思わせ、またそれと相反する
女心を感じさせる柔らかい表情も見せた。
とりわけ立ち回りシーンでの目力はなかなかの胆力。
女剣士としての雰囲気はよく出ていたと思う。
脇役では國村隼と甲本雅裕の演技が素晴らしかった。
甲本雅裕は藤沢周平の家族からも絶賛されたらしいが、
見事な役作りで物語を締める。
剣より学問が得意な役なのだが、実際の本人は
なんと剣道4段の腕前とのこと。
破顔一笑、最初出てきたときに笑いすら誘うその笑顔が、
物語の最後ではなんとも頼もしく愛しい表情に見える。
奥行きのあるいい芝居だなぁと思った。
櫻守
いい曲です。
頑なに、信じた愛を貫き通す・・盲目なまでに。
確か時代劇の主題歌だったような・・・ジャケットには「藤沢周平の用心棒日月抄」主題歌と書いてあります。
アルバム未収録なのが残念です(おそらく)。私は8cmシングルをネットで探して買いました。
蝉しぐれ (文春文庫)
イージーマネーがジャブジャブしていたあの頃、「根拠なき熱狂」が支配していたあの頃、日本人が物欲と西欧かぶれの二重苦を抱えて醜悪化の一途を辿ったバブル期に地方紙に連載(1986〜87年)された時代小説。バブルは死んだがこの小説は残った。残って日本人に美しい男女の恋の物語を語り続けている。映画化は顰蹙を買ったが(少なくとも私の周囲では)、テレビシリーズは名品で、外国で賞を取ったりしている。
お隣さん同士の少年と少女が成長し、お互いを意識する年齢になる。若竹のような少年と可憐で楚々とした少女。二人は理想の男女の型に沿って作られたキャラだが、この「型」に込められた人間の希求というのがある。清く存在したい、という願い。作者の哀切もまた窺える。おそらく作者は当時の日本人の姿に傷ついていた。
結ばれるのが当然のような男女が世の理不尽に流されていく三十年弱の歳月を追う中で、若竹の少年は忍苦の中で悪声を放たず、他人と争わず、泣く時は一人で泣く。少女は権力者の寵を得てなお清楚な心を失わず、少年を愛し続け、おそらく彼女もまた一人で泣いている。この物語の人々は秘め事を秘め事のままにしておける。現代人は秘密を守るのが苦手だ。「理解される」ことに餓えているから。本書の男女は「きちんとした振る舞い」に重きを置く世界に生きている。
ラブストーリーを描くには実はこれほどの物語の厚みと段取りが必要なのだと、これほど的確な描写の分量と筆の調子の高さが必要なのだと、痛いほど実感させてもらえる一冊。超一流の技というのは気持ちの良いものです。
隠し剣孤影抄 (文春文庫)
藤沢作品のよさはまず安心感。まず、はずれがない。
そして読後感のよさ。
うーんとうなったり、やられたと思ったり。
そして、短編での藤沢作品のよさは最後の一文にある。
一編一編余韻に浸れるすばらしい一文がそこにはある。
個人的には、女人剣さざ波を南海キャンディーズの静ちゃん主演で映画化もありかなと思う。